未アップだった音源をアップしました。(2018/04/22更新分)

去年の秋に入荷してからずっとアップしていませんでした。めちゃくちゃ遅くなってしまってすみません!
広島のFixing A Hole Recordsから以下の音源を入荷してます。 

Headsparks - Vs The Metric System (CD)
Skimmer & Navel - Split (CD)
Tonota 80 - Killer Sands And Beating Hearts (CD)
Kenny Baker - Out Of There, Out Of Time (CD)

各音源の詳細や購入はこちらより→http://nezuminofukuro.cart.fc2.com/

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さいきんチェックしたもの

最近チェックしたり聴いたりした音源いくつか。

ELMAR - Betriebstemperatur, halten
kuballa - Split w/ pADDELNoHNEkANU
KLÜTE - No Youth
Shoplifters - Forgiver
Bleakness - Ruined Fate
Telecult - Waiting
SamePain - Demo '17
serpent - Demo
Combo Breaker - Vol. 1
Rough Spring - S/T

もうまもなくTwisted ChordsよりリリースされるドイツのELMARの1stアルバムはレーベルの紹介文でも引き合いに出されてるMuff PotterやDüsenjägerなどの系譜の哀愁メロディックパンク。デビューEPがなかなかいい感じだったけどこのアルバムではさらに良くなってる。TurbostaatやLeatherfaceが頭がよぎるこれまたドイツのバンドkuballa。デモをのぞけば、現時点で最新作のスプリットも合わせて3枚音源がある。ばりかっこいい。スペインのKLÜTEのアルバムもごく最近リリースされたので聴いた。バンド名にウムラウトを付けてるのはやっぱHüsker Düの影響だろうか。1回目より2回目、2回目よりも3回目と聴くごとにフィットしてくる。ちなみにリリース元のひとつであるBartolini RecordsはセルビアShopliftersの新作7"の共同リリースにも参加。日本だとWaterslide Recordsがリリースに関わっているそのShopliftersの新しい音源もすばらしい。ぼくは過去にディストロしていたこともある1stアルバムがいちばん好きなのだけど、メンバーチェンジ以降においてはこの7"が最も良いんじゃないかと。フランスのDestructure Recordsをよくチェックしてるが、レーベルオーナーがやっているBleaknessのEPがとてもよかった。今後同レーベルよりYouth AvoidersやSyndrome 81やLitigeといったバンドのアルバムがそれぞれリリースされる予定。The Helltonsのメンバーの3/4がやっているフランスのバンドTelecultはRed DonsやRadioactivity等を思わせるポップパンクということで目新しさは感じないけど本当にちょうどよい。他にはSamePain (ex-Cowcatcher)やserpent (ex-The Gundown)やCombo Breaker (ex-Millones de Colores)などを聴いてた。それからRough SpringのEP。たぶん他にも聴いたりしてるけど、とりあえずこんな感じ。あとはDead Broke Rekerdsのリリース予定にHidden SpotsのLPと書いてあったのでその続報を待ってる。Basement Benders, Concrete Beez, Mixed Signals, Rivers Edge等の別バンドもやってる(と思う)けどやっぱHidden Spotsはキニナルゥ。

ごーるどれこーず

最近聴いてたやつ。

USシアトルの3人組GOLD RECORDS(バンド名です)の2012年作。

Higley(今年念願のアルバム出した)がおすすめしててそれで知った。

My Nameをやってた人やSlorderをやってた人たちがやっているバンド。

アルバム名も一風変わっているけど、Cruzianのヘンテコなの好きな人に。

 

 

らっどあうる

そういや先日、山に自生しているアケビを取ってきて生まれて初めて食べた。果実全体に比して小さい果肉部分はゼリー状になっていて仄かに甘い。なかなか爽やかな味なのだが、なんせ種がかなり多いため都度それを吐き出さねばならない。かぶりついて甘みを舌いっぱいに味わって飲み込むということがしたいのにそれができないもどかしさ。でもキライじゃない。

ところでRad Owlの来たるべきアルバムがわりと気になっている。以前の記事で書いたMarbleの再発盤をまだ手に入れていないので、その作品のライナーに掲載されているインタビューのなかでこの現行バンドについて言及されているのかどうかぼくには定かではないが。2016年結成で今月19日に初ライブを飾ったとのこと。 

 

 

こーるどはーとでいず

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ここ最近はずっと雨ふってて、かなんわ〜。

そんな湿っぽい雰囲気にぴったり(?)なフランスはカーンのバンドCold Heart Daysの2015年のデモ(ダウンロードしたやつ)を先日聴いておりマシタ。

JawbreakerやHot Water Musicとかの影響があるのかなと思いつつ、またSecond RateやFlying Donutsといったフランスのバンドの感触もある。

以前に聴いたときはハマらなかったけど聴き直したらまあまあ良かった。バンド名やロゴからも伝わってくるような哀愁のメロディックパンクでじわじわとくる。

バンドの近況を追ってみたら、1st LPのレコーディングが先日完了した(あるいは進行中?)とのこと。地味だけど地味にたのしみ。

ちゅーち?ちょーあーく?

アメリカのピッツバーグの隠れCruzianパンクバンドChoochのBandcampを見つけた。オフィシャルなのかどうかわからん。唯一の単独音源であるカセットEPの曲がダウンロード可能。20年前の音源でっせ。ScariesとかBen Grimあたりが好きな人も聴いてみたら?ちなみにYouTubeにも歌詞付きでアップされてる。

木曜日おめでとう

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このまえ図書館で借りた『タオのプーさん』。ことによると、これは重要な本かもしれない。あくまでぼくにとっては。まあ、重要かどうかはさておき、たのしく読めた。

どんな本かというと、「クマのプーさんをとおしてタオイズムの原理を説明し、タオイズムの原理をとおしてクマのプーさんを解釈する本を書いてやろう」と、まえがきにあるとおり。つまり、そおいう本。ここでいうタオイズムとは老荘思想のこと。老子荘子。あのプーさんとどう結びつくのか。

本書では、著者のベンジャミン・ホフさんが、A・A・ミルン作の『クマのプーさん』や『プー横丁にたった家』のいろんなお話をとおして、作中の登場動物たちとおしゃべりしつつ、ときどき『道徳経』や『荘子』をはじめとする中国の古典などからの引用をはさみながら「タオ」を語ってる。原書の"The Tao of Pooh"の刊行が1982年、日本語版のこの本が出版されたのが1989年。新しい本ではない。

これを読んでタオイズムないし「タオ」を理解できるかどうかはわからない。タオイズムを体系的な思想とみなし、知識のための知識としてアタマに詰めこむことが理解やっていうんなら、この本はあまり役に立たないと思う。ものごとを<こんがらからせる>ことなく、プーのように素朴にたのしく生きる知恵をつかみとるためのヒントなら、もしかしたら見つかるかもしれない。

 

なんていいつつ、これから書くことは知識のための知識になってしまってるかも。でもそれはそれでおもしろかったりする。

『タオのプーさん』のはじめのほうに「酢を味わう者」という絵にまつわる話が出てくる。絵には、大きな酢桶をかこんで立つ3人の男が描かれてる。孔子仏陀老子孔子はすっぱそうな表情、仏陀は苦い顔なのに、老子はほほえみを浮かべてる。どういうことか?こまかいとこをすっとばすと、「ほかのふたりの表情からもわかるように、人生を象徴するその酢はたしかにイタダケナイ味だったにちがいない。けれども(中略)タオイストにいわせれば、酸いも苦いも、ありのままを受け容れようとしないおせっかいな心から出ているのだ。あるがままに理解して役立てれば、人生そのものは甘い。それが『酢を味わう者』のメッセージだ」という。

ところで、この「酢を味わう者」は東洋では古くからよく知られた画題で、「三酸図」や「三聖吸酸(図)」と呼ばれてきたらしい。英語では"The Vinegar Tasters"となる。これはぼくの大好きなJ Churchの前身バンドCringerの3rdデモのタイトルでもある。以下のリンク先で曲を視聴できるので聴いてみて。このサイトは、ハワイパンクシーン創生期の情報をまとめた「Hawaii 70s-80s Punk Museum」というすばらしいサイト。CringerのオリジナルメンバーであるDave Carrさんが運営してる。

Cringer: The Vinegar Tasters

このころはまだGardnerさんがボーカルの時代。アナーコパンクやハードコアなどからの影響が濃いのかもしれないけど、後年のキャッチーなポップパンクサウンドの萌芽もちゃんと感じられる。なんか、1曲目"Ignorant Decision"のイントロのギターが、J Churchのラストアルバム『Horror Of Life』の"New Ho Chi Minh City"のそれに似てる気がする。

 

『タオのプーさん』には「カトルストン・パイ」と題された章がある。カトルストン・パイとは、『クマのプーさん』のお話のなかでプーがうたってる歌のひとつ。ちょっと聴いてみよう。


Cringer - Cottleston Pie

Cottleston Cottleston Cottleston Pie,
カトルストン、カトルストン、カトルストン・パイ
A fly can't bird, but a bird can fly.
ハエはとびるが、トビははえない
Ask me a riddle and I reply
なぞなぞ出すなら、ぼく答えたい
Cottleston Cottleston Cottleston Pie.
カトルストン、カトルストン、カトルストン・パイ

Cottleston Cottleston Cottleston Pie,
カトルストン、カトルストン、カトルストン・パイ
A fish can't whistle and neither can I.
魚もぼくも、口笛吹けない
Ask me a riddle and I reply
なぞなぞ出すなら、ぼく答えたい
Cottleston Cottleston Cottleston Pie.
カトルストン、カトルストン、カトルストン・パイ

Cottleston Cottleston Cottleston Pie,
カトルストン、カトルストン、カトルストン・パイ
Why does a chicken? I don't know why.
ヒヨコがどうしてなんて知ったこっちゃない
Ask me a riddle and I reply
なぞなぞ出すなら、ぼく答えたい
Cottleston Cottleston Cottleston Pie.
カトルストン、カトルストン、カトルストン・パイ

 

あ、しまった。これはCringerの"Cottleston Pie"だった。でも、おんなじことだ。原作でプーがうたってる歌詞そのままだから。お話は文字で書かれてるので、プーがどんなふうにうたってるかはわからない。けど、わからないほうがいいときもある。想像する余地が残されてるし。Cringerは自分たちのメロディーをつけた。

上の日本語訳は、石井桃子さん訳の『クマのプーさん』(岩波少年文庫)じゃなくて、『タオのプーさん』に載ってるほう。もとの英語詞と同じく韻を踏むように工夫して訳してある。

『タオのプーさん』の著者によれば、 このカトルストン・パイの歌で<内なる自然>を説明できるのだという。<内なる自然>とは、人間ひとりひとりを含めたあらゆるものがそれぞれにもつ<あるがままのもの>のこととされる。くわしいことは本文からの引用で済ますと楽ちん。

まず歌の1番について。

「ハエはとびるが、トビははえない」。きわめて単純。はっきりしたもんだ。そうでしょ?なのに、なんとおおぜいのひとが毎日毎日の生活でこの単純な原理に逆らい、四角い木釘を丸い穴にはめこもうとして、<ものごとはあるがままにある>という明白な事実を無視していることか。(中略)自分自身の<内なる自然>を知り、それを尊重すれば、自分のいるべきところがわかる。自分のいるべきでないところもわかる。あるひとにとって栄養になるものが、ほかのひとには毒になることも珍しくないし、ひとによってはめくるめくばかりわくわくすることが、ほかのひとには危険な罠になることだってある。

2番について。

「魚もぼくも、口笛吹けない」。賢明な心から出た、こういう見解のいわんとすることは、「ぼくには一定の限界があり、自分でそれを心得ている」ということだ。そういう心は、それ相応の行動をとる。口笛を吹けなくたってべつに悪いことはない。魚ならなおさらだ。しかし、できるようにつくられていないことをしようと、ガムシャラにがんばると、いろいろ悪いことが起こるかもしれない。(中略)だからといって、変化や向上を止める必要がある、というわけではない。<そこにあるもの>を認める必要があるというだけのことだ。

最後。

「ヒヨコがどうしてなんて知ったこっちゃない」。なぜヒヨコは、ヒヨコがするようなことをするのか?知らないでしょう?ぼくたちだって。知っているひとなんかいない。(中略)重要なのは、ほんとうに知る必要はないということだ。近視眼的科学をまねる必要などない。科学は世界を顕微鏡越しにのぞき、絶対わかりっこない答をさがして、かえって疑問をふやしてしまう。また、不必要な問いを発して無意味な解答を出す、観念的哲学者の役を演じる必要もない。必要なのは、<内なる自然>を認め、<あるがままのもの>とともにやっていくことだ。

 

ところで、Cringer〜J ChurchのLance HahnさんはHoney Bear Recordsという名前でレーベルをやってたくらいだから、やっぱり『クマのプーさん』好きだったのかな。『タオのプーさん』のことは、なんかのインタビューで「すばらしい本だ」と言ってた。

Cringerは『Time for a little something』という7インチを出してる(この記事のいちばん上の写真に写ってるやつ)。タイトルは『Winnie The Pooh』に出てくる言葉から取られてる。石井桃子さん訳の『クマのプーさん』では「なにかひと口やるお時間」と訳されていて、たぶんおやつの時間みたいなもんやと思う。プーがつぼに顔をつっこんでハチミツをむさぼってるジャケのイラストも本の挿絵からパクってる。

また、J Churchの初期の7インチのインナーには、"The forest will always be there and anybody who is friendly with bears can find it"(「森はいつでもそこにあります。そして、クマと仲よしのひとたちなら、だれでもそれを見つけることができるのです」)という文字とともに、クリストファー・ロビンとプーが手をつなぐイラストがちょこっと載ってたりする(よく見たら「© Disney」と小さく印字されてる。ディズニー関連のグッズかなにかから取ったのかな?)。こういうかわいいイラストがあるかと思えば、スペイン革命時のアナキストの写真をアートワークに使ってたりするのが、J Churchのおもしろいところ。

 

さて、『タオのプーさん』を読んだあとは、いままでスルーしてた『クマのプーさん』と『プー横丁にたった家』も図書館で借りて読んだ。おもしろかった。陰気な老ロバ、イーヨーの誕生日の話が好き。

ちなみに、『タオのプーさん』の姉妹本として『タオとコブタ』というのもある。プーの友だちのコブタに焦点が当てられ、「徳」について語られる。といっても、コブタのことはあんまり書かれてない気がする。どちらかというと、著者のベンジャミン・ホフさん自身が前面に出てる感じがして、ちょっと理屈っぽくなってるかもしれない。