じょいなー?

知る人ぞ知る90's怪エモバンドDriver ElevenのあとのバンドであるJoin'rのたぶん最初の音源がメンバー運営のレーベルであるYour New BoyfriendのBandcampにアップされてた。前身バンドともどもディスコグラフィー出えへんかなぁ。

(追記: 上記のBandcampページがなくなってJoin'rのBandcampができた模様)

すーパーせっしょン

ウニ刺さったことありますか? 

 

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ちなみにぼくはないです。

山に囲まれた盆地に棲んでいるぼくは海に住んでいるウニとは縁がない。海に遊びにいった記憶もほとんどないし。サーフィンをする人はしばしばウニを踏んでしまうと聞く。ウニだらけのスポットならばそうなのだろう。刺さったら無論痛いだろうが、むしろウニを踏んでこそだというポジティブ精神で臨むのがサーフィンが上手くなる秘訣だという(ほんまか?)右足で踏んでしまったら今度は左足をウニに差し出せっていうあれか(どれ?)。

さて、上の写真にあるのはSuperSessionの『Urchin』というアルバム。見たらわかるように、ジャケの絵はめっちゃウニ。ほんでアルバムタイトルのUrchinもウニ。いやーこれはちょっとウニすぎるぞ!と思ったあなた、安心してほしい。内容は全然ウニじゃないので。いや実はそうとも言い切れない、かもしれない。それとよく見たらバンドロゴもわりと主張している。SuperとSessionの二つの単語の頭文字を一文字で担っている大Sが頼もしいし、PとRにはお目目が付いててkawaiiね。

おっと、SuperSessionについて触れておかねば。SuperSessionは2001年頃に結成され現在も活動を続けているバンド。ハモサビーチやレドンドビーチといった都市があるアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスのサウスベイエリアを拠点としているようだ。有名どころでいえばDescendentsBlack Flagなどがハモサビーチを地元としているが、SuperSessionのメンバーもやはりガキの時分それらの影響を受けて育ったそうな。バンドのFacebookのプロフィールには、Descendents/ALL, Bad Brains, Black Flag, Bad Religion, Lag Wagonなどが影響として挙げられている。Bandcampの方にはThe LastやPennywiseといったこちらもハモサビーチ出身のバンドの名前も。いちおうSuperSessionの現/元メンバーのなかにはThe Lastに在籍経験がある人やPennywiseメンバーの身内の人もいたり、あとギターボーカルのTony CookさんはDescendentsの元ベーシストのTony LombardoさんとLaunchpadというバンド(かなり気になる)を過去にやってたりと、どうやらそんな感じらしいよ。

2000年代の初めより活動してきたSuperSessionにとって『Urchin』はおそらく唯一のアルバムだと思われる。しかも本作は制作開始から完成に至るまでかなり時間がかかったようだ。バンド結成から10年が経過した2011年に最初のレコーディングを行ない、2014年にメンバーチェンジ後の新体制でさらに数曲を録音、その時点で先行でアルバム収録予定の3曲が入ったサンプラーCDを発売。しかしまもなく出るかと思われたアルバムはなかなか出ず。そしてようやくリリースされたのが2018年。ついに完成した音源だったはずだけど、本人たちは少なくともネット空間では宣伝的なことをほぼしてなかったし、ライブ以外での販売に関する情報もないっぼい感じだった。ぼくの場合は、2019年に入ってSuperSessionのアルバムがBandcampに全曲アップされていたのを機に同サイトの問い合わせ機能を介してバンドに連絡を取ってみた。したらバンドからCDを送ってくれると返事が来てすぐに送ってもらえた。

そんなSuperSessionによる13曲入りのアルバム。イントロから疾走感が溢れ出す軽快な一曲から始まる。このバンドのサウンドはスケートパンクだとかメロディックパンクだとか、言ってしまえばメロコアである。でも典型的なそれと比べると雰囲気の異なる、なんていうか、かなり渋いメロコア。イケイケな感じではなく、かといって硬派な印象も受けない。高速でもなく若さに任せたほとばしるような勢いもないが、そもそも若くないが、より無駄のない整ったエネルギーを放ってくるし、また、すぐにでも口ずさみたくなるような印象的な歌メロはないが、軽妙なギターに導かれ、熟成された憂いといまだに残った青さが合わさったような楽曲は聴くほどに味が出てくる。歌詞に関しても、物事が移りゆくなかで昔を懐古しつつも、楽しかったあの頃のように今からやっていこうぜという前向きさがある、と同時にそう簡単にうまくはいかず苦闘する、みたいな。ところで、印刷された歌詞の文字がちっちゃくてぼやけているから読みにくい。

おそらくライブでも定番の流れであろう1曲目"Smoke"と2曲目"Another Day"は、ほんのり切なくも爽快感があり好きな2曲だ。実際このバンドのことが気になりだしたのは数年前にこの2曲を聴いたのがきっかけだった。たぶんぼくの青春的なバンドであるChopperをどことなく思い出したからだろう。そんなに似ているわけではないけれど、ちょっとノスタルジックなものに触れると警戒心が解かれてしまうのだ。3〜6曲目には2014年に追加録音された4曲が並んでる。4曲目と5曲目なんかは他よりも若干スピーディでより直球のメロコアっぽいかな。6曲目は表題曲でもあるインストナンバー"Urchin"。つまりウニ。このインストに象徴されるように、強く影響を受けているDescendents/ALLに通じるコミカルな感じもそこそこあり、そこもこのバンドの魅力。インストを挟んで一旦仕切り直し、という感じで始まる7曲目"Brand New Way"。他よりテンポ抑えめで、歌が始まると本作一の哀愁メロディーが放たれるいぶし銀ナンバー。続いて8曲目の"Dark Gray Sea"はどこかセンチメンタルな気分になる。アルバム中では前半から後半へと移行する6曲目と7曲目からのこの8曲目の流れも好きだ。それから先も疾走感のある2曲のあとに"Brand New Way"と双璧をなす渋さの11曲目"Good Year"ときて、そしてヘンテコメロコアなラスト2曲まで聴き応えがある。

さあ、ここまで駄文を書いてきたけど、ただ最後にこれだけは言わせてほしい。

 

ぼくはウニが刺さったことないけど、このウニのアルバムはぼくの心に刺さった。

(うまいこと言えてんのかこれ?)

 

 

いんすと

DescendentsやALLみたいなインストナンバーって、本家は抜きにしても、どれくらいあるんだろうね。探してみたらたくさんあるのだろうけど、該当しそうだなと思える曲のなかでYouTubeにあったのいくつか貼ってみる。曲の良し悪しとかじゃなくちょっと「それっぽい」やつをテキトーに。他にも候補があったけれど、とりあえず下に挙げたのは現状自分にとってすぐに思い出せたもの。

 

STUKAS - 01:50 A.M.


スウェーデンのStukasの2ndアルバムの冒頭を飾る曲。

 

 

NEIGHBOUR - Intro


チリのDescendents/ALLフォロワーNeighbourのアルバムの始まりを告げるとともに次曲に向けて弾みをつけるべく勢いのある曲。

 

 

G-WHIZ - Outback


アリゾナの泣き虫メロディックの異名をとる?G-Whizにもこういったハードな雰囲気のインストがある。V.A.とやたら長い名前の編集盤みたいなCDに入ってる。

 

 

FIVE FOOT NOTHING - Fluffo

カナダのトロント郊外のFive Foot Nothing。この感じに歌が加わることでさらにへなちょこ弱虫メロディックとして隙なしというか隙だらけでサイコー。

 

 

FOURTH GRADE NOTHING - Jack Frost


メジャー契約下で出るべきアルバムが出せなかった無念のバンド4GNが解散前後に残したラスト作より。このバンドらしい爽やかさ。

 

 

LAMBDA LAMBDA LAMBDA - Ctrl+X Ctrl+V

ブラジル・サンパウロのLambda Lambda Lambda(Tri-Lambda)の1stアルバムにいくつか入っているインスト曲のひとつ。

 

 

BACK TO NORMAL - Dentage

Bad Religion等のUSメロディック影響下のフィンランドのBack To Normalのアルバムの中でいわゆるCruzianなのはこの曲のみ。ウキウキナンバー。

 

 

SUBURBAN PROPAIN - Ocean Boulevard

Suburban Propainの2枚組7"のD面1曲目。1st 7"に入ってた曲の再録版。メンバーはキャロライナでAssorted Porkchopsというレーベルやっている/いた人。

 

 

DELMAR - I Am Not Larry

アルゼンチンのDelmarのEPおよび編集盤に収録の曲。たしかメンバーの1人は同時代に共に活動していたFun Peopleおよびそれに続くBoom Boom Kidに参加。

 

 

POLLEN - Gumdrop

Pollenの1stアルバムの幕を開けるインスト曲。このバンドも初期はしょぼくてだんだんエモ化していく。G-WhizJimmy Eat Worldと同郷なのもなんか頷ける。

 

 

RED FISHER - Sussy Brew

カナダはウィニペグのRed Fisherのラストアルバムより。後年Boss Tuneageからリリース予定だったベスト盤がポシャったのは惜しかった。

 

 

L.E.S.C - Aerosmith Tickets

USミシガンのLazy Eye Speech Community(L.E.S.C)のアルバムの最後の曲。メンバー1人脱退後にパートを入れ替えてSmall Brown Bikeを始動。

でぃいふぇんべいかあ

だいぶ春めいてきた。おだやかな陽気に誘われて散歩に出かけたくなる。でも家では陰気な音楽を聴く。

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1996年から2004年くらいまで活動していたと思われるスウェーデンの(おそらくヨーテボリの)Diefenbakerは、RandyのベーシストだったPatrik TrydvallさんがRandy脱退後にやってたバンド。こちらではギターにもちかえ、メインボーカルをつとめる。なんかPropagandhiを抜けたJohn K. SamsonさんがThe Weakerthansをはじめる流れに似てるなと思ってたら、DiefenbakerのアルバムのサンクスリストにThe Weakerthansもちゃんと載ってた。Diefenbakerという語を検索すると、カナダの第13代首相か、カナダの『騎馬警官』というテレビドラマに登場する狼犬がよく出てくるけど、バンド名の由来はそのどちらかなのか、それともまったく関係ないのか。わからない。でもなんかカナダとのつながりを匂わせる。

確認できるかぎり、リリース作品は多くない。デモテープ1本、7インチ1枚、アルバム1枚。あとはPatrikさんが編集した動物解放がテーマのコンピ『Defenders Of The Oppressed Breed』に参加してるくらい。なぜかUKのEighty Sixと仲がよかったみたいで、Bombed Out Recordsからスプリットを出す話もあったとかなかったとか。

単独7"の『Strike The Match』は1998年に録音されたものの、バンドもその立ち上げにかかわったThe Ringside Corporationというレーベルからリリースされたのは2000年になってから。6曲も収録されてるからすごくお得感がある。サウンドは初期Randyのようなめちゃくちゃタイトでキレッキレな高速メロディックではなく、勢いはあるがもっと渋めで陰鬱なメロディックパンク。A面1曲目の緊迫感のある雰囲気はSamiamに通じるところがあるし、B面3曲目の途中のリズムチェンジや間奏なんかはJawbreakerを思わせる。意外だったのがB面1曲目。弾けるような青いギターワークがScariesみたい。また、Randyのころとはうってかわり、Diefenbakerでは過度にしゃがれさせないボーカルスタイルになってる。言いたいことはぜんぶ言いきってやろうとばかりに息継ぎもそこそこに歌がまくしたてられるから、メロディーはできるだけ間を埋めるようにつめこまれてる感じ。英語でうたわれる歌詞は、政治的/社会的なものと個人的なものが半分ずつ。「女」という特定のカテゴリーにふりわけられる人たちが、性差別主義的な因習と文化のなかで非人間化/モノ化され、構造的/物理的な有形無形の暴力を「男」たちから受けることの不当性と、だれもがおびえながら生きなくてもいいように、「男」が態度とふるまいを変えることの必要性をうたう"Secure The Area"。ファシストとそれを守る警察にたいする闘争賛歌"Boosting The Morale"など。個人的な歌詞はおもに愛にまつわること。

『Los Muertos』は、2002年に米国ポートランドのSuburban Justiceからリリースされた唯一のアルバム。単独7"とも少し雰囲気が変わって、全体的にテンポを落とし、いちだんと渋くなった印象。やっぱりJawbreakerの影響は大きいのかな。でも典型的なフォロワーとはちがう。曲によってはRusty JamesとかPainted Thinが頭にチラつくけど、気のせいかもしれない。それらに比肩するほど悲哀を帯びたエモーショナルさはなく、もっとこう、ザラッと歪んだギターが重々しく響く感じ。少し冗長ぎみの歌のなかにはキラリと光るメロディーが潜んでいて、キャッチーじゃないのに妙にクセになる。たまに憂鬱な気分になるくらい暗い。激しめのメロディックハードコアな曲もあったりする。歌詞の内容は、肉食と動物の権利、階級闘争と連帯、負債とグローバル経済、街頭行動と警察による弾圧、社会道徳のウソと自己の変革、おしゃべりではなく行動への呼びかけ、ファシストのヘイト・デモ、父親への恨みなど、政治的かつ個人的な言明。とりとめのない考えをそのままぶつけたかのよう。そのせいか、ちょっと押しつけがましいところもあるので、そこは好きじゃないけど、おおむね考えるべき問いを発してると思う。サウンドをふくめ総合的にはとてもいい作品。

ところで、このアルバムの13トラック目には、Ward Churchillという人のスポークンワードが40分くらい収録されてる。 クレジットに詳しい情報はない。ぼくは英語のリスニングがまるでダメなので、ぜんぜん聞きとれない。あきらめるしかないと思ってた。ところが、上に貼りつけたYouTubeの投稿に自動生成の字幕機能がついてて、試しに「オン」にしてみたら、あらまあ、読めるじゃないの!完璧ではないにしても、精度はそれなりに高いと思う。8割以上は合ってるんちゃうかな(と願ってる)。こんなこと言ってたんか。どんな内容かというと、アメリカ先住民(ここではアメリカ・インディアンと言ってる)の置かれた状況、(コロンブスアメリカ「発見」以来)500年つづくアメリカ先住民に対する戦争と植民地主義アメリカ・インディアン運動だけでなく米国の市民運動を弾圧するFBIとその極秘プログラム「COINTELPRO」(コインテルプロ)、それが行き着く先の警察国家

かなり興味深い話だったので、Ward Churchill(ワード・チャーチル)さんがだれなのか気になった。かつてはコロラド大学ボウルダー校のアメリカ・インディアン研究の教授およびエスニック・スタディーズの学部長をつとめ、北米先住民ための研究と運動に献身してきた人らしい。自身も先住民の血を引くという。日本語の情報があまりないんやけど、こちらのブログでかれの略歴をまとめてくれてる。どうやら、Political AsylumのRamseyさんが立ち上げたAK Pressからかれの本が何冊か出てたり、RamseyさんがAK Pressを去ったあとにはじめたPM Pressからもエッセイ選集や過去の著作の新版が出版されてるみたい。おもしろそうな本がたくさんあるけど、日本語の翻訳は1冊も出てないっぽい。出てたら読みたいんやけど。2017年にPM Pressから第3版が出版された『Pacifism as Pathology: Reflections on the Role of Armed Struggle in North America』という本におさめられたワード・チャーチルさんの論考の日本語訳がこちらのサイトで読める。ありがたい。ただし、かなり長いので読むだけで一苦労。そのうえ理解するのに二苦労。でも平和主義と非暴力運動について無視できない論点が散りばめられてる気がする(まだちゃんと読めてない)。

さらに調べたら、ワード・チャーチルさんは書籍だけじゃなくスポークンワードのCDも何枚か出してることがわかった。そのなかに、PropagandhiのメンバーがやってたG7 Welcoming Committee RecordsとAK Pressが2003年に共同リリースした『In A Pig's Eye: Reflections on the Police State, Repression and Native America』という2枚組CDがあって、なんとなしに収録曲(曲と言っていいのか)の題名を見てたら「あれ?」ってなった。これってもしかしてDiefenbakerのアルバムに入ってたスポークンワードと同じちゃう?YouTubeにこのCDがアップされてるの見つけたので、聴きくらべてみたら、まちがいない、おんなじやつ。2001年にサンフランシスコのニュー・カレッジ・オブ・カリフォルニアという大学でおこなわれたワード・チャーチルさんの講演を録音したものらしい。Diefenbakerの『Los Muertos』には、『In A Pig's Eye』のディスク1に収録されたトラック2の"Hello My Relatives"からトラック12の"You Have a Police State"の途中までが、トラック分けされずに入ってる。ジャーナリストのクリスチャン・パレンティさんが講演者の経歴や活動などを紹介してるトラック1のイントロダクションは省かれてる。『Los Muertos』は『In A Pig's Eye』より1年リリースが早いけど、リリース元のSuburban JusticeはAK Pressとつながりがあったとの情報もどこかで小耳に挟んだ。

そういうつながりもおもしろかったので、このスポークンワードを以下に訳してみました。全部はしんどいのでDiefenbakerのアルバムに入ってるぶんだけ。前述のとおりリスニングができないため自動生成の字幕機能に頼ったこと、さらにぼくの翻訳能力がだいぶ怪しいことを考慮すると、まったく信頼のおける代物じゃないと思う。ぼくはアナログな人間なのでとりあえずWordにいちいち文字起こししたけど、文の切れ目がわからず右往左往をくりかえし(字幕機能もカンマやピリオドまでは打ってくれない)、ここ何ヶ月か無駄に時間だけかけてせっせと訳してきた。なんとか読める形になっててほしいけど、自分でもよくわからない部分がある(笑)。

けっこう長いので、気になる人だけ「続きを読む」からどうぞ。

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この頃ちぇっくしたもの

個人的にこの頃チェックしたり聴いたりした音源のいくつか。

Bestiärio - MalViaje
Pocket Genius - Taverner
Hangtime - INVASION
Alien Boys - Night Danger
Better Off Dead - Sans Issues
NOTHING MORE - Game of Truth
LANE - A Shiny Day
Lygo - Schwerkraft
THE T.V. DINNERS - S/T
control - lette never sent

コロンビアのボゴタで活動するBestiärioが2作目のアルバムを昨年2018年にリリースしてた。心の底からの叫びのような愛と憎しみのフォークパンク。うちで入荷したDays n' DazeやBlackbird Raumといったバンドが好きな人にもオススメだと思う。昨年末に7年ぶりとなるPocket Geniusの新譜がひっそりとリリースされていた。これまでもカナディアンバンドになりすました最優秀アメリカンバンドとしてジュノー賞を受賞してきた(本人たちによるネタ)が、今作にはDoughboysをはじめとするカナダのバンドへのオマージュ曲も入ってて、持ち前のグッドメロディーを聴かせる素晴らしい作品。現在デジタルのみなのでフィジカル化されるのか気になる。一方、実際にカナダのトロントで活動するHangtimeは来たるべき新作EPリリースに向けて新曲をアップしている。こちらもDoughboys大好きバンドとして先のPocket Geniusとも共鳴するであろう爽やかで突き抜けたメロディックパワーポップパンク。今年の1月にDesolate RecordsよりLPをリリースしているカナダはバンクーバーの5人組バンドAlien Boys。哀愁を帯びた力強いサウンドはレーベルインフォで引き合いに出されているLa Fraction、それにPost RegimentやAssassinators等のユーロメロディックハードコアを想起させる。かっこいい。去年にDestructure Recordsより1stアルバムを出したフランスはアンジェのBetter Off Deadが2019年に入って単独7"とCookiesとのスプリットを立て続けに発表。歌詞をこれまでの英語から母語であるフランス語に変えたことが功を奏したか、楽曲はさらに情感を増したように感じられる。La Fraction meets Short Daysな哀愁パンク。Accidenteが好きな人もね。1992年より活動を続けるフランスのベテランバンドNothing Moreが2018年に4thアルバムをリリースしていた。Descendents/All影響下のCruzianメロディックパンクは今作でも健在であり、11年ぶりのアルバムということで気合い込もった作品。またフランスのベテラン、Les ThugsのメンバーがやっているLANEが1stアルバムを今年の3月に出す予定とのこと。デビューEPがわりと好きな感じだったので気になっている。今のところ"Winnipeg"という曲が先行で聴ける。ドイツのバンドLygoは2016年のミニアルバムに引き続きKidnap Musicから2018年にフルレングスを出していて、相変わらず初期Turbostaatを彷彿とさせるエモーショナルメロディックパンクだった。2013年に再結成した名古屋のTHE T.V. DINNERSの待望のアルバムは1曲目の"Letter"を試聴したらばかっこよくて。日本語詞ということで自分にとってはダイレクトに頭の中に入ってくるわけで、それが意味の連なりにならなくても音と言葉を通じて情景や感覚や感情が浮かんでは消えていくその感じが好きだなぁ。東京で活動するcontrolの初の7インチがもうすぐリリースされる。先日2/23に初売り企画が行なわれたそうだけど、正式リリース日は3/20とのこと。前作のテープもよかったけど、新しい7"からの1曲"letter never sent"を試聴したらばこれまた。サッドメロディック版Tonkaってわけでもないと思うけど、なんだろうこの琴線に触れてくる感じ。あと福岡のScreaming Fat Ratのコンプリート音源集や四国のTurncoatのニューアルバムなども楽しみ。それはそうと、いまだに手に入れておらず聴けていないChestnut RoadとNavelのスプリットがほしいけど、入荷してはるディストロさんでは軒並み売り切れだからなぁ。ゲットできるかなぁ…。

QFR

昨年、突如として再結成を果たし、25年ぶりのヨーロッパツアーをおこない、そのツアーに合わせて未発表のデモやライブ音源を収録した編集盤をBoss TuneageからリリースしたMoving Targets。今後、新しいアルバムが出そうだし、もしかしたら日本ツアーもあるかもしれない。今年は4月にDescendents、7月にSamiam、11月にBlack Flagと、往年の「伝説的な」バンドたちが軒並み来日予定。海外のDIYパンクバンドも近年はたくさん来てる。いつかMoving Targetsもあるんじゃないかと期待してしまう。

それで思い出すのがこんな歌。

Look at the pictures is there anyone I know and isn't that the shirt that I bought at the Moving Targets-show. I can't believe this haircut when I let my hair just grow. I would like to be again at this Moving Targets-show.

 

写真を見てごらん、知ってる人はいるかな?/あれはMoving Targetsのショーで買ったシャツじゃない?/髪を伸ばしていたときの自分がこんな髪型だったなんて信じられない/もう一度このMoving Targetsのショーに行きたいな/

 

これはQuest For Rescueの"Look at the Pictures"という曲の一節。QFRは、ドイツのレーヴァークーゼンとケルン出身のバンド。1991年に結成され、近年は数えるほどしかライブしてないけど、たぶんまだ解散してない。活動25周年をむかえた2016年には、Audiolith Recordsというハンブルクのレーベルから、かれらの全3枚のアルバムがデジタルで利用可能になった。各種音楽配信サービスで聴けるはず。

TRUST Fanzineのインタビューで、この曲で言及しているMoving Targetsのショーについて聞かれたQFRのメンバーは、「いつだったかは思い出せないけど、ケルンのRose Clubで見た"Burning in Water"ツアー[のライブ]だった」と答えている。そこでRose Clubのメモリアルページを見たら、1990年7月26日にMoving Targetsがライブしたという記録がちゃんと残っていた。同インタビューによると、メンバー4人のうち3人がその場にいたらしい。この経験がQFRの結成、ひいてはかれらの音楽性に大きな影響を与えたんじゃないかなって思ったり。

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QFRは2本のデモ、2枚の7インチ、そして3枚のアルバムを残してる。なぜか野菜の名前をタイトルにした作品が多く、1994年の単独7"は『Cauliflower』(カリフラワー)、1995年の1stアルバムは『Asparagus』(アスパラガス)、1998年の2ndアルバムは『Turnip』(カブ)といった具合。でも残念ながら、2007年の3rdアルバムは『Common Grounds』となっている。さすがに『Potato』だとドイツといえば的なイメージを狙いすぎかもしれないので、せめて『Zucchini』とか『Lettuce』とかにしてほしかった(笑)。

上の写真ではグリーンアスパラを並べてしまったけど、ドイツでアスパラガスといえば白アスパラのことを指すらしく、ドイツ語でSpargel(シュパーゲル)といい、春の訪れを告げる味覚として親しまれてるという(こっちでいうタケノコみたいな感じ?)。でもそもそも近所のスーパーに白アスパラなんか売ってないしなぁ。もし万が一、QFRのメンバーがこのブログを見つけて、この写真を見て、「そっちのアスパラガスじゃねえよ」ってコメントしてきたらどうしよう。。

あと『Cauliflower』7"は、以前もってたはずなのに、探しても見つからなかったので(売ってしまったんかな…)、写真を撮れなかった。野菜のカリフラワーはあんまり好きじゃないし、まあいいや(ブロッコリーは好き。野菜もバンドも)。手元にないのでバンドのSoundCloudで聴こうっと(ほかに初期デモの曲もいくつか聴けまっせ)。ちなみに『Cauliflower』はドイツのBlurr Recordsのリリース第1作目であり、QFRのアルバムは3枚ともBlurrから出てる。Free YourselfやT(h)reeeなんかも出してるナイスなレーベル。

デビューアルバムでありながらフレッシュさとは無縁な 『Asparagus』。わるくいえば地味、よくいえば渋い。どっちにしろ、ぼくはこういうのが好き。メンバーにはBMXのプロライダーがいたり、BMXやスケボーのビデオにも楽曲提供をしたことがあるというQFRだけど、スケートパンク的なノリのよさはない。むしろなにか釈然としない重い空気がただよう。平易な英語による歌詞も、すれちがい、孤独、不安など内向きなものが多い。このアルバムがいちばん簡素で飾り気がなく、こぢんまりとした印象を受けるかもしれない。ただ、"Try"や"Time Goes By"など目を見はるような曲があるのも事実。落ち着きのあるボーカルがうたうメロディーのよさがひときわ目立つ。ドイツのバンドながらアメリカのメロディックなパンク/ハードコアからの影響がうかがえ、Moving TargetsやHüsker Düはもちろんのこと、SamiamやPegboyが頭に浮かんでしまう。

Moving Targetsのショーをなつかしむ先述の"Look at the Pictures"が1曲目に位置する『Turnip』。QFRの本領発揮はここからと言いたい。一気に枯れた味わいを獲得した印象。感情の機微を丁寧に拾いあげるかのようにサウンドに繊細さが加わったおかげで、じんわりと楽曲にひたる余地ができた。やりたい音を出せるようになったのか、Moving Targetsに一歩近づいた感がある。もちろん、QFRにしかない魅力があるわけだから、そんな言いかたは失礼なのだけど。アルバムのまんなかに置かれた"Seasons"は、本作の核といえるバンドの代表曲で、アルバム全体の雰囲気を要約してるような感じがする。季節の移ろいと感情の移ろいを重ねる歌。夏は過ぎ去った。窓の外を見ると、雨がしとしと降っていた。遠くでは夕闇の青黒い光がかすかにたゆたっている。そんな景色。こうやって勝手にイメージをふくらませて遊びたい。QFRの歌詞は「close my eyes」という表現がよく出てくる気がするので、できれば目を閉じて聴きたい。そうすると自動的に部屋のすみっこで膝をかかえる形になる。余談だけど、同時期のドイツにTurnipというエモバンドがいて、本作のサンクスリストにちゃんと名前が載ってる。かれらにちなんでこのアルバム名にしたのかな?

前作から9年。長い冬ごもりのすえに芽吹いた『Common Grounds』。そんな意図はまったくないだろうけど、ジャケットの白と薄緑の配色も、雪のあいだから顔をのぞかせる草花を思いおこさせる。でも実際、サウンドは明るさを増していて、春のやわらかな光が似合う作品となった。音の輪郭がクリアになり、風通しがいい。エモの香りが鼻腔をくすぐる。おもに対人関係をうたう歌詞は明るくなったとは言わないけど、少なくともネガティブな感情を引きずらなくなった。心にゆとりが生まれ、過去にとらわれずに現実を受け止められるようになったみたいな。9年たてば生活環境も変われば考えかたも変わる。成熟なのか、あきらめなのか。お互いの「common grounds」(共通点、落としどころ)を見いだしながら、場合によってはきっぱりと距離をおく。やさしくもあり、さびしくもある。水のなかで燃えている。って、かっこつけて書いても恥じないくらい、聴いてるとエモい気分になる。

えちれん?

2月に入ったと思ったらもう12日ですか。最近はYouTubeさくらももこさんの『コジコジ』ばっかり見てた。

で、これは『コジコジ』がテレビで放送開始する1997年にリリースされた(1996年リリースという情報もある)Ethylineの1stアルバム『Jitters』。

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Ethylineは、米国シカゴのポップパンクバンドSludgeworthの後身バンド。1993年にSludgeworthが解散したあと、ボーカルのDanさんがScreeching Weaselでの活動をつづける一方、残りのメンバーは新ボーカルのMattさんをむかえてPoundというバンドを結成し、のちに改名してEthylineになる。MattさんはSludgeworthのアルバムにコーラスとして参加してた人みたいやね。解散の原因は、「わてはもっとポップパンクのサウンドをつきつめたいんや」というDanさんと、「いやいや、わてらはもっとファンクとかオルタナがやりたいんや」という残りのメンバーとの、いわゆる音楽の方向性のちがいってやつらしい。

ぼくはファンクとかオルタナとかぜんぜんわからないけど、EthylineのサウンドはSamiamに接近したSludgeworthって感じ。このアルバムの2曲目3曲目7曲目なんかはSludgeworthまんまやね。解散しなくてもよかったのではと思ってしまう。しぼり出すような力強いボーカルや陰りを帯びたエモーショナルなギターはSamiamからの影響大って感じ。曲によっては同系統のFarsideやSlap Of Reality、あとフランスのSixpackなんかを思わせたりする。

歌詞カードには各曲の歌詞のほんの一部しか載ってなくて、 しかもそれが曲順に並んでないので、何曲目のどこにそのフレーズが出てくるかを見つけるゲームみたいな感覚で聴いたらちょっとたのしかった。

このアルバムはWild West RecordsとFluid Recordingsというレーベルから出てる。どっちも知らないレーベル。Wild WestはどうやらAmerican Recordingsというメジャー傘下のサブレーベルらしい。Fluidのほうはというと、今作のクレジットにWild Westの部門のひとつと書いてある。さらにクレジットを見ると、流通にEdelやSonyが関わっているのがわかる。どういう経緯でリリースにいたったんやろう?しかもDiscogsで調べたら、Fluidがリリースしてるのってヒップホップばっかり。謎や。

ところで先日、Ethylineの2ndアルバム『Long Gone』がeBayで売られていて、送料込みで5.86ポンド(820円くらい)と安めだったので買った。そんで2週間後に届いた封筒を意気揚々と開けると、Jeff Robinsonの『Eyewitness』という見知らぬ作品が入ってた。えっ、だれ?いままでディストロ入荷をふくめ海外からいろいろ輸入/購入してきたけど、おまけでつけてくれた音源はべつとして、まるっきりちがうブツが送られてきたのははじめてかもしれない。どうやらジャズシンガーらしい。なにをどうまちがったんかな?「Eyewitness」が「Ethyline」に見えたってこと?なんだか腑に落ちないまま手にしたCDを見ると、リリース元がFluid / Wild Westだとわかった。Ethylineと同じレーベル。でもそれだけでまちがえるかな?

売り手に連絡をとってみた。「ちがう商品が届きました。正しい商品を送ってください。返品が必要なら、やりかたを教えてください」と書くと、2日後に謝罪メールがきた。「24時間以内に返金いたします。その商品はお好きなように処分してください。返品の必要はありません」とあり、そのあとすぐに返金してきた。いや、返金じゃなくて現物を送ってほしいのになと思ってたら、同じ売り手のストアにまだ『Long Gone』の在庫があると表示されてたので、半信半疑ながらもういちど買ってみた。さすがに今度は大丈夫やろうと。ふたたび2週間ほど待って、やってきたのは、そう、Jeff Robinson。

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天丼すぎて笑ってしまった。もう売り手の不注意によるミスとかじゃなくて、たぶん在庫管理のデータ登録の段階でまちがえてるんやと思う。よくよく確認したら、ぼくがCDを購入したストアは個人売買を仲介する会社みたいで、少なくないネガティブ評価を圧倒的な取引件数でかき消すことで99%以上の高評価を保ってるようなところだったので、そんなとこから買ったぼくにも落ち度がある。ディストロとかレコ屋さんならこんな感じのまちがいは絶対しないもんな。

まあ、今回は縁がなかったということで、YouTubeで我慢しよっと。ぼくは利用してないのでわからないけど、SpotifyApple Musicでも聴けるみたい。

『Long Gone』は2002年リリースだから前作から5年たってるけど、丸くなるどころかドライブ感が増してノリがよくなった気がする。1曲目のイントロからしてそうやけど、Sludgeworthの香りはまだちらほら残ってる。『You Are Freaking Me Out』期のSamiamっぽい曲もいくつかある。こっちのアルバムのほうが好みかも!ただYoung MCの"Bust A Move"のカバーはいらんかも!

EthylineはのちにMagnaFUxと改名して、2013年にアルバムを出してる。