ぶれいぶハんズ

Brave Handsのアルバムがとても素晴らしいなと思った。

 

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Brave HandsはRidgemontやPeeple Watchin'のメンバーであるMamboによるソロプロジェクトとして始まり、最初のデモ発表からほどなくしてバンド形態となる。Mamboがボーカル/ギター、Caitlinがベース/ボーカル、そしてRidgemontでギターを弾いていたMaxがドラムを担当する。当初はアメリカのマサチューセッツ州ボストンを拠点としていたが、現在はオレゴン州ポートランドにて活動している。

これまでにデモやEPなどいくつかの音源を発表しているが、『To End All Worth』と題されたBrave Hands初のフルレングスがSalinas Recordsよりリリース(フォーマットはLP)。一昨日(7月20日)から同アルバムが全曲ストリーミングできるようになったので、ぼくはレコードに針を落とす瞬間を待ちわびる選択をすることなくすぐさま聴いてしまったのだった。

全曲公開される前に先行で聴くことのできた2曲(アルバムの2曲目と10曲目)ですでに本作の感触を掴んでいた気でいたが、1曲目の"Liam"が始まり、自分の勝手な予測とは裏腹に初っぱなから溢れんばかりの勢いと疾走感に面食らったのも束の間、すでに作品に引き込まれていた。うねるようなトンネルの中を猛スピードで駆け抜け、壁面に映し出される情景が高速で過ぎ去っていくような、音とともに去来するイメージと感情の応対。そのときのぼくは体が固まったかのように立ち尽くしていた。そのあとも目まぐるしくも心揺さぶる素晴らしい曲が矢継ぎ早に続いたことで、ぼくは何を見ているでもなく前方を見つめ、そしてずっとドキドキしていた。実際に心臓が早鐘を打っていたかどうかは忘れた。ただ作品に引き込まれていた。その感覚はわりと久しぶりだった気がする。アルバムを聴き終えて笑みがこぼれた。

Bandcampでは「anxiety rock」とタグ付けされていることもあり、決して陽気で明るい題材を扱っているわけではないと思われるが、それこそ自分自身を追い込んでしまうような憂いと鬱屈でいっぱいの場所から何かをなんとか力いっぱい解き放つような、希望の光が差すかもわからない状況の中でもがいているような、個人的には曲を聴いてそんな漠然としたイメージを想起されられた。実際にはどんなことを歌っているのか気になる。元G.L.O.S.S.のSadieがアルバムのレビューというかコメントを寄せており、そこで歌詞についても少し触れられているのでその内容に関して全く手がかりがないわけではないけど、やはり早く歌詞も読んでみたいな。余談だけど、そのコメント内でこのBrave Handsのアルバムに対してTHE GIBBONSやLEATHERFACEが引き合いに出されていたりもする。その形容にも納得するし、また双方ともに自分の好きなバンドだが、LEATHERFACEについてはその手の音楽のレビューで名前が挙がることが多いだけに驚きはないけど、GIBBONSの名前が挙がったのは地味に嬉しいというか印象的だった(SadieはThe State Lotteryの1stアルバムを自身のオールタイムフェイバリットの一枚であると以前どこかのインタビューで答えていたので、同バンドの前身であるThe Gibbonsもきっと好きなんだろう)。

とにかくBrave Handsのアルバムとてもいいんじゃないかな。過去の音源ではエモリバイバルとかトゥインクルエモに若干傾いている感じの時期もあったし、また、Salinas的な昨今のインディーロック/パンクに共鳴するような感性を持っていないとは言えないと思うけど、このアルバムではLattermanやRVIVRといったバンドが好きな人のみならず、それこそ往年のSnuffy Smileが好きな人も気に入りそうなメロディックパンクを聴かせてくれる。部分的にはまるでRidgemontの頃の燃えるラフメロディック魂を取り戻したんじゃないかと思えたり、たっぷり染み付いた哀愁や陰りに90年代的なエモーショナルな雰囲気を纏って全く異なる表情を見せてくれたり。ここに至るまでの過程で色んなものを呑み込んだ上で吐き出された曲は実際どれもこれも素晴らしい。たぶん。繊細で、むき出しで。

 

LP欲しいなー。