93-94

特に理由はないけど、手元にあるCDから、前世紀の93年か94年にリリースにされたもので、それがそのバンドのアルバムとしては一作目で、その中で自分の今好きなやつを選んで「#私を構成する9枚」的に並べて撮った一枚がこちらです。前世紀の93年や94年に出たアルバムといっても実際に手に取ったのはもっとずっとあと、つまり今世紀になってからのこと。

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じゃあ今からどうでもいいコメントと、あと好きな曲貼るわ。

Pods - Where I'm Calling From
Lemonheadsをほとんど聴いてこなかった人生。なんでか?なんでや?たぶんいちばん最初に手に取ったアルバムが当時はあんまピンとこーへんかったんや。それがどのアルバムやったかすらもはや思い出せない。それで長らく敬遠してきたけど、去年Lemonheadsのアルバム初期三作を聴いたらとても良かった。特に二作目。初期はEvanさんとBenさんの2人で主に曲を書いてたけど、自分が好きやなと感じるのはだいたいBenさんの楽曲の方である。そんなBenさんも三作目のあとにバンドを脱退してしまう。そのあとは大学生ということで学業に専念するようになるが、弟のJonnoさんに説き伏せられる形で始めたのがこのPods。ところでこのバンドあんま知られていないような気がするけど、なんでや?それはそれとして。こちらは94年にリリースされた最初で最後のアルバム。あとにメンバーの就職や大学入学が控えていたこともあり、バンドの活動停止とともに本作が最後になることは当初から決まっていたらしい。そのため入れられるだけ曲を入れたとのこと。たしかに本作は16曲収録とわりと曲数多めやな。初期LemonheadsおよびBenさんが今やってるVarsity Dragが好きならおそらくこれも気に入るんじゃないかと。実際その2バンドの間をつなぐのがこのPodsでもあるし、スタイル的にも大きく変わるとこはないと思う。パンク/ハードコアはもとよりここではメインストリームのポップスの要素も持ち込まれているらしく、それによって持ち前のメロディーの良さは生かされ、より柔らかみや深みが出ている面もあるけど、個人的にあまり好きじゃない曲も多い。でも1曲目"Promise"や5曲目"Name In Vain"、あと11曲目"New Strings"なんかは極上のメロディックチューンちゃうかな。ブックレットにはPodsが影響を受けたミュージシャンやバンド、はたまた詩人や作家などのリストが載っている。アルバムタイトルの『Where I'm Calling From』もまたRaymond Carverレイモンド・カーヴァー)の短編小説の題名からそのまま拝借したもの。さらにカーヴァーの同短編小説をもろに歌詞に反映した同じく"Where I'm Calling From"という曲が本作の10曲目に収録されている。Jonnoさんも曲を書いてるが、特にBenさんが手掛けた楽曲は、絶望の淵に沈みながらも救われる温かさがあったり、逆にやさしさのなかに悲哀があったりと、まるでカーヴァーの詩や小説のように思えたり。

 

② 2 Line Filler - So Far Lost
何かのきっかけでいわゆる90年代エモーショナルメロディックを掘っていくことになると、その過程で必ず出会うことになる、2 Line Fillerはそんなバンド。「これ最高だから聴いてみろよ」ってことでメロディック狂たちが紹介したりオススメしてたバンドや音源に夢中になっていたあの頃、このバンドの存在感は自分の中でも際立っている。それにしても2018年になって2 Line Fillerが新曲を発表するなんて。びっくりだよね。その曲がこれまためっちゃ2LFなわけで。往年のね。たしかオリジナルメンバーで復活したという話だけど、そうなるとちょうどこの1stアルバム『So Far Lost』のときのラインナップということになる。本作のあとにギターボーカルのMattさん以外のメンバーがみんな抜けちゃうんだよな。せっかくオリジナルのメンバーに戻ったのなら1stアルバムも初期音源と合わせて再発したりせえへんかな。探している人も多いやろうし。かくいう自分もこのCDをゲットするのに苦労した記憶がある。いや実際はそんな苦労したというほどでもないけど、二度ほど僅差のタイミングで買い逃しているというか。このアルバムはBreak Even Pointというイタリアのレーベルから出てるんやけど、自分が探していたときもすでにリリースから10年以上経ってたので当然廃盤で、ネット上においてはヨーロッパのレコ屋とかでごくまれに中古を見かけることがあるという感じだった。あるときどこかのディストロで売られているのを見つけ、それこそ喜び勇んで問い合わせてみたところ、「数日前に日本から注文があって売れちゃった」という回答。一度目がそれで、なんと別の場所での二度目も全く同じだった。このバンドを好きだという人はもちろん日本に限らずいるわけだが、思い出すのはBadger〜The Tie That Bindsをやっていた人と一時期連絡を取り合っていたときに2LFの話題で盛り上がったことがあったな。その人は1stアルバムの歌詞を知りたがってた。歌詞カードをスキャンしたりする環境になかった自分は全ての曲の歌詞を手動で打ち込んで送った。とてもめんどくさかった。ちなみにBadgerとThe Tie That Bindsは2LFが好きな人にもオススメだ。Samiam直系バンド。あと2 Line FillerなのかTwo Line Fillerなのか問題はまた今度。

 

③ Balance - Balance
上でちらっと言及したBreak Even Pointから92年にSlap Of Realityの7インチが出ている。しかしSlap Of Realityの公式サイトではその作品はなかったことにされている。実際、同音源にはボーカルとギターの主要メンバー2名が参加していない。そこで代役を立ててレコーディングしたのはたしかで、そのあとも僅かな期間活動したのか、あるいはすでにバンドは解散していたのか、それはわからない。そしてその7インチに参加していない2人、FrankさんとJoeさんが次に結成したバンドがこのBalanceである。Pink LincolnsのKevinさんや、そのKevinさんとPseudo HeroesやDown By Lawといったバンドで共にすることになるSamさんも当初在籍していた。なお、SamさんはFrankさんとケンカしこのアルバムの前に脱退している(しかしDown By Lawのオーディションを受けるきっかけを作ったのもまたFrankさんとのこと)。Balanceが短命で終わったのち、95年頃に再結成したSlap Of Realityが通算2枚目となるアルバム『Monkeydust』をリリース後に再び解散、FrankさんとJoeさんによる同路線のバンドとしてはそのあとClosure〜The Sophomore Effortへとつながっていくという流れ。しかるにSlap Of Realityの一度目の解散と再結成に挟まれる形のBalanceは、もちろんメンバー構成には違いがあるが、それらの時期をつなぐような音楽性なので、一方が好きならば他方も好きなはず。Samiamをもっと地味にしたようなエモーショナルメロディックで、よく動くベースしかりCruzianなバンドに通じる部分もあったり。そして、長い年月を経て2010年にまたもや再開したSlap Of Reality。現在は新音源が待たれるという状況、なのか?

 

④ Nowhere - Wonder
この作品はミニアルバムとして捉えられるかもしれないので選ぶか一瞬迷ったのだけど、迷ったの一瞬だけ。いちおう8曲入ってるんでアルバムでもええでっしゃろ?というか厳密にアルバムかどうかは今回の企画にとってどうでもええんや!フィンランドにおいてAmazing Tailsと並んでいち早くUSハードコアから影響を受けたグレイトなメロディックサウンドを鳴らしていたバンド。というかAmazing Tailsもくそほどかっこいいよな。NowhereとAmazing Tailsの関係としては同じコンピに一緒に参加しているくらいで特に絡みがあったりつるんだりしていたわけではなかったみたい。さてさて、93年リリースのこの(ミニ)アルバム、ジャケはあれだけど内容はめちゃ良いよ。よりSnuff似のファストメロディックぶりを見せていた以前の2枚の7インチに比べてスピードは抑え気味。それでも充分な疾走感のなかにドラマ性を持たせ、よりメロディーを押し出し泣ける展開へと拍車がかかっている本作の方が自分好み。記憶を辿れば、NowhereはたしかPostcard From Youというサイトで知った覚えがあるけど、当時を思い返すと、「こんなんどっから見つけてくんねん」って思うようなバンドや音源を紹介している個人ホームページを眺めるのがとても好きだったな。あと好きなバンドや音源が自分と同じだとか似ている人がいて、その人がそういったバンドや音源について語ったり感想を述べたりするのを読むのが好きだった。

 

⑤ Gameface - Good
Gamefaceのどの音源から入ったかというと、自分の場合はRevelationからリリースされた3rdアルバムと4thアルバムだった。そこからさかのぼって2ndアルバム、1stアルバムと手に入れ、結局自分が最も気に入ったアルバムはNetwork Soundからの一作目『Good』だった。この初期の塩梅が自分の肌には合っているのかなと。AllにBig Drill CarとCruzian Punk的なものも感じる。そんなことより1st以外のアルバムが手元にない。あるはずの2ndも探したがやはり見つからなかった。断捨離じゃないけど物への執着が薄まったときに手放してしまったようだ。ないならないでいいんやけど、自分が売ったりあげたりした音源の中にはもう一度聴きたいなと思うものも少なくなかったり。でも自分以上に聴いてくれる人の手に渡ったはず。ところでGamefaceを聴くとFarsideを思い出し、Farsideを聴くとGamefaceを思い出すってな具合に、両者の音楽性には相通ずるものを感じる。お互い同じくらいの時期にカリフォルニアのシーンに登場してるし、当時から頻繁にステージを共にする交友関係にあったという。Farsideに関してはGamefaceとは逆にラストアルバムが最も好き。あれも名盤。Gamefaceといえば今年2月に来日ツアーを果たした。でも自分は行ってないのでそれについて書けることもないんやけど。

 

⑥ Stukas - The World According To
かつて自分にはCruzian Punkのおっしょさんが二人いたんや。こちらが勝手にそう思ってただけやけど。そのうちの一人がやっていたディストロで音源を購入して度肝を抜かれたのがStukasとPorcelain Boysだった。そしてMarbleの存在を教えてもらう。そこからCruzian Punkにのめり込んでいくことになる。あれから十余年経った今でもその熱はたびたび再燃する。そういうわけでそのときに買ったStukasの2ndアルバム『Showing Off』にはささやかな思い入れがある。あとになって手に入れた94年リリースの1stアルバム『The World According To』の方も内容では引けを取らないとても好きな作品。ところどころ見られる「ヒネクレ」含め、そのサウンドはAllやDescendentsをもろに感じさせ、それだけでなく特有の哀愁がかったメロディー、ベースのMiaさんとギターのPuttraさんのそれぞれの色のボーカルにハーモニーも絶妙な抜群のポップチューンが次々と繰り出される。ちなみに二人は家族。sisterとbrother。前述のようにStukasの音源を初めて手に入れたのはおっしょさんのディストロだったんだけど、このバンドのことを知ったのはハイパーイナフ大学で集中講義を受けていたときだった。真面目に授業を聞いていたつもりだったけど、その講義ではいかんせんスウェーデンという自分に馴染みのない土地のバンドを次々と紹介していたのでStukasに関してもうろ覚えだった。それでも課外活動で穴掘りを続けた甲斐あって、また別の鉱脈から掘り当てることができた。

 

⑦ Bum - Wanna Smash Sensation!
バンドや音源を紹介している個人のホームページを眺めるのが好きだったと先に書いた。その中でも、自分が好む音楽のテイスト、その趣味嗜好の形成に大きく寄与したまさに原点ともいえるサイト、それが前出のハイパーイナフ大学。変な学長や怪しげな講師たちが教鞭を取るユーモラスな大学だ。自分の中にある「メロディック」ないし「メロディックパンク」のイメージや解釈はそこで教わったものが基盤になってるっぽい。そこで紹介されている音源のいくつかは今に至るまでずっと聴き続けている。Bumの『In Wanna Smash Sensation!』なんかもそれに当たる。古株さんや。もちろん昔に比べたら聴く頻度は減ったけどときおり思い出しては聴きたくなる。「久々にあれ聴こうかな」とCDやレコードを引っ張り出すとこまではいっても「うーん、やっぱやめとこ」となることもしょっちゅうあるわけで、その点このBumのアルバムなら即決で再生機器行き。内容は文句なしに良い。ジャケットの妙な躍動感もポイントかもしれない。ところで日本語圏においては90年代前半のポップパンクの名バンドとしてBumはParasitesやVacant Lotと並んで語られることがあまりにも多いため、自分の頭の中でもこの三者はセットになってしまっている。Screeching WeaselやQueersに代表されるとこのいわゆる「ポップパンク」の文脈で紹介されたり名前が挙がるバンドを掘り下げてはこなかった自分でも上記3バンドには夢中になった。ちなみに大学は単位が足らず中退。

 

⑧ J Church - Quetzalcoatl
知り合いがJ Churchのこと好きで好きで…。

 

⑨ Elmerhassel - Billyous
LeatherfaceやMega City Fourといったバンドをまだ知る前の右も左もわからなかった自分はChopperやBroccoliに出会ってUKメロディックの魅力に取り憑かれた。学校やサッカーの練習に向かう電車の中でも聴きまくっていた青春時代。それらのバンドも「UKメロディック」という言葉でのみ語られるべきではないとはいえ、自分の場合はその言葉を通じてあるいはそれを指標とすることで素晴らしいバンドに出会ってきたのはたしか。一方でたとえばSnuffなんかはUKメロディックという言葉を知る以前に全国チェーンのレンタル屋でCDを借りたのがその出会いであったが、そこでは「メロコア」として分類されていたこともあり、Snuffみたいなのをもっと聴きたいなと思って他の「メロコア」のバンドを聴いてみたはいいものの「何か違うな」となってそこから発展することはなかった。あくまで自分の場合はね。その後、地元の今は亡きパンクレコード専門店で手に入れたChopperのアルバムに曲名とイントロからしてもろな"Snuff One"という曲があって驚いたのを覚えている。そこで初めて自分の中でUKメロディックとSnuffがつながっていく。その話はおまけとしても、ChopperやBroccoliに感銘を受けて以降「UKメロディック」と呼ばれるバンドを漁っていくようになる。その頃はChopperやBroccoliなどはとっくに解散しており、Blockoなどはいたもののリアルタイムで活動しているその手のUKバンドは少なかったので、逆に古い年代のバンドに注目していった。そんな感じで、あるとき、92年リリースのBoss Tuneageからのコンピ『Floor 81』を手に取る。その中でなんとなく印象に残ったのがElmerhasselだった。「これはエルマー…ハッセル…でええんか?」とバンド名の読み方もようわからんままに聴いた"Suffocated"という曲がなぜか自分の心をとらえた。それで気になってはいたものの国内では音源が見つからず。Elmerhasselのこの1stアルバムを手に入れたのはしばらくあと、しかも輸入代行サービスというのを利用して海外から買った記憶がある。そしてようやく聴くことのできたアルバム。その即効性のなさは折り紙つきであり、派手さはなく繊細。その渋さをもって「これこそUKメロディック」なんてふうに思ってしまうような素晴らしい作品だ。ときに暗くじめついた哀愁も雨上がりの澄んだ空気に瑞々しく、そこに光沢や透明感すら感じられて心地良い。ようやく効いてくるメロディーがストレートに心に響く。そんなElmerhasselもなんとディスコグラフィーが2015年にリリースされている。

 

なに長々と書いとんねん。

さて、今回はこういう感じになったけど、みなさんにとっても懐かしかったり今でも好きで聴いてるっていうものある?