すーパーせっしょン

ウニ刺さったことありますか? 

 

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ちなみにぼくはないです。

山に囲まれた盆地に棲んでいるぼくは海に住んでいるウニとは縁がない。海に遊びにいった記憶もほとんどないし。サーフィンをする人はしばしばウニを踏んでしまうと聞く。ウニだらけのスポットならばそうなのだろう。刺さったら無論痛いだろうが、むしろウニを踏んでこそだというポジティブ精神で臨むのがサーフィンが上手くなる秘訣だという(ほんまか?)右足で踏んでしまったら今度は左足をウニに差し出せっていうあれか(どれ?)。

さて、上の写真にあるのはSuperSessionの『Urchin』というアルバム。見たらわかるように、ジャケの絵はめっちゃウニ。ほんでアルバムタイトルのUrchinもウニ。いやーこれはちょっとウニすぎるぞ!と思ったあなた、安心してほしい。内容は全然ウニじゃないので。いや実はそうとも言い切れない、かもしれない。それとよく見たらバンドロゴもわりと主張している。SuperとSessionの二つの単語の頭文字を一文字で担っている大Sが頼もしいし、PとRにはお目目が付いててkawaiiね。

おっと、SuperSessionについて触れておかねば。SuperSessionは2001年頃に結成され現在も活動を続けているバンド。ハモサビーチやレドンドビーチといった都市があるアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスのサウスベイエリアを拠点としているようだ。有名どころでいえばDescendentsBlack Flagなどがハモサビーチを地元としているが、SuperSessionのメンバーもやはりガキの時分それらの影響を受けて育ったそうな。バンドのFacebookのプロフィールには、Descendents/ALL, Bad Brains, Black Flag, Bad Religion, Lag Wagonなどが影響として挙げられている。Bandcampの方にはThe LastやPennywiseといったこちらもハモサビーチ出身のバンドの名前も。いちおうSuperSessionの現/元メンバーのなかにはThe Lastに在籍経験がある人やPennywiseメンバーの身内の人もいたり、あとギターボーカルのTony CookさんはDescendentsの元ベーシストのTony LombardoさんとLaunchpadというバンド(かなり気になる)を過去にやってたりと、どうやらそんな感じらしいよ。

2000年代の初めより活動してきたSuperSessionにとって『Urchin』はおそらく唯一のアルバムだと思われる。しかも本作は制作開始から完成に至るまでかなり時間がかかったようだ。バンド結成から10年が経過した2011年に最初のレコーディングを行ない、2014年にメンバーチェンジ後の新体制でさらに数曲を録音、その時点で先行でアルバム収録予定の3曲が入ったサンプラーCDを発売。しかしまもなく出るかと思われたアルバムはなかなか出ず。そしてようやくリリースされたのが2018年。ついに完成した音源だったはずだけど、本人たちは少なくともネット空間では宣伝的なことをほぼしてなかったし、ライブ以外での販売に関する情報もないっぼい感じだった。ぼくの場合は、2019年に入ってSuperSessionのアルバムがBandcampに全曲アップされていたのを機に同サイトの問い合わせ機能を介してバンドに連絡を取ってみた。したらバンドからCDを送ってくれると返事が来てすぐに送ってもらえた。

そんなSuperSessionによる13曲入りのアルバム。イントロから疾走感が溢れ出す軽快な一曲から始まる。このバンドのサウンドはスケートパンクだとかメロディックパンクだとか、言ってしまえばメロコアである。でも典型的なそれと比べると雰囲気の異なる、なんていうか、かなり渋いメロコア。イケイケな感じではなく、かといって硬派な印象も受けない。高速でもなく若さに任せたほとばしるような勢いもないが、そもそも若くないが、より無駄のない整ったエネルギーを放ってくるし、また、すぐにでも口ずさみたくなるような印象的な歌メロはないが、軽妙なギターに導かれ、熟成された憂いといまだに残った青さが合わさったような楽曲は聴くほどに味が出てくる。歌詞に関しても、物事が移りゆくなかで昔を懐古しつつも、楽しかったあの頃のように今からやっていこうぜという前向きさがある、と同時にそう簡単にうまくはいかず苦闘する、みたいな。ところで、印刷された歌詞の文字がちっちゃくてぼやけているから読みにくい。

おそらくライブでも定番の流れであろう1曲目"Smoke"と2曲目"Another Day"は、ほんのり切なくも爽快感があり好きな2曲だ。実際このバンドのことが気になりだしたのは数年前にこの2曲を聴いたのがきっかけだった。たぶんぼくの青春的なバンドであるChopperをどことなく思い出したからだろう。そんなに似ているわけではないけれど、ちょっとノスタルジックなものに触れると警戒心が解かれてしまうのだ。3〜6曲目には2014年に追加録音された4曲が並んでる。4曲目と5曲目なんかは他よりも若干スピーディでより直球のメロコアっぽいかな。6曲目は表題曲でもあるインストナンバー"Urchin"。つまりウニ。このインストに象徴されるように、強く影響を受けているDescendents/ALLに通じるコミカルな感じもそこそこあり、そこもこのバンドの魅力。インストを挟んで一旦仕切り直し、という感じで始まる7曲目"Brand New Way"。他よりテンポ抑えめで、歌が始まると本作一の哀愁メロディーが放たれるいぶし銀ナンバー。続いて8曲目の"Dark Gray Sea"はどこかセンチメンタルな気分になる。アルバム中では前半から後半へと移行する6曲目と7曲目からのこの8曲目の流れも好きだ。それから先も疾走感のある2曲のあとに"Brand New Way"と双璧をなす渋さの11曲目"Good Year"ときて、そしてヘンテコメロコアなラスト2曲まで聴き応えがある。

さあ、ここまで駄文を書いてきたけど、ただ最後にこれだけは言わせてほしい。

 

ぼくはウニが刺さったことないけど、このウニのアルバムはぼくの心に刺さった。

(うまいこと言えてんのかこれ?)