びゅふぉーど

ぼくはBufordが好きだ。Bufordの曲をきくのが好きだ。 

 

、  、、

 

千回ときいた曲でいまだにふるえたりする。

 

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Bufordは、カリフォルニアのレドンドビーチを拠点に1995年から1998年まで活動していたとされる4人組。リリース数は多くないが、その3年ほどの間にすばらしい音源をのこしてくれた。当バンドのギタリストLuisさんがNoise Patch Recordsという自主レーベルを運営しており、世に出されたBufordの3枚の7インチもすべてそこからリリースされている。

このバンドは本人たち曰くHusker Du, Replacements, Superchunkなどの影響を受けているらしい。そこは大いに合点がいくと同時にBufordもやはり時代の産物であるので、当時の気運を受けた90年代後半にかけてのエモに通じる音楽性をもっている。Samiamや2 Line FillerやEversorといったバンドが好きな人からも愛されるのもうなずける最高のメロディーとエモーション。それはまた独自の色をはなってきく者をひきつける。またBufordは前身バンドのひとつであるFor Saleの世界観を受けついでいる部分もあると思う。ちょうどFor Saleが90年代ポップパンクファンにおなじみのShredder Recordsからのコンピ、一方BufordがDeep Elm Recordsのエモ日記コンピに収録されているってのが、両者の質のちがいだけでなくそれぞれが活動していた時期の潮流みたいなものを物語っているかなと。あとRhythm CollisionやConquistadorsなどもBufordの前身にあたる。Dead Lazlo's Placeもね。

ぼくのBufordデビューはSleepasaurusとのスプリット7インチだった。この円盤にはじめて針を落として流れてきた"After Dark"という曲にまんまと心をわしづかみにされてしまったのであった。どうにもできないやるせなさを喚起してくるような名曲であるが、そのときは単純に「やばい曲に出会った」という興奮がそれをうわまわっていた。つづく"Seven"でもドラマチックがとまらない。だからこの2曲を延々ききながら「こ、こりはおりのためのおんがくだぁ…」と一人壁にむかって唱えながらプルップルふるえてたんとちゃうかな。しらんけど。そんでSleepasaurusが負けじともってきた"April Showers"もその曲名を冠したディストロがのちにあらわれるくらいには良い曲。

つぎに手にとったBuford唯一の単独音源であるセルフタイトルの7インチではA面の1曲目"Pedal On"から一気に引きこまれた。さらなるBufordワールドにぼくが足をふみいれたというだけなのだが、今作に収録されている4曲によってこのバンドのなんていうかもう少しふところの広いところを見せられた気分だった。きくまえからの胸の高鳴りはききおえたあともとまらない。たしかにB面の最後がループ再生されてずっと鳴りっぱなしやったけど(ロックド・グルーヴという仕様らしい)。なんにせよこれまた大当たりのレコードだったわけで、「もしかしたらこのバンドは全音源ええんちゃうか」という疑念がわきはじめていた。そうなるとほかの作品もさがすしかなくなる。For Saleもそのながれでさがしはじめたんだけど。

前述の2作品より前のリリースとなるLoose Changeとのスプリット7インチ、このレコードでBufordはヴァイナルデビューを飾っている。初期音源だからなおさらかもしれないけど、今作におけるBufordは前身バンドFor Saleの面影をつよくのこしており、1曲目の"Incomplete"なんかはFor Saleの続編みたいな感覚。かと思えば、つづく"Repitition"ではより熱情的なそのエモーショナルさの質感がSamiam辺りを彷彿させる。しかしどんな表情をみせてもBufordはBufordってことでけっきょくどの曲もぼくの琴線にふれてくるのであった。お相手であるLoose Changeもグッドなポップパンクで、Noise Patchからは今作の数年後にアルバムをリリースしている。

3枚の7インチのほかにもBufordはいくつかのコンピに参加している。さきに書いたBuford/SleepasaurusのスプリットをNoise patchと共同でリリースしているレーベルであるMotherbox Recordsからのコンピ『Diversified Chaos』と『More Kaos』にはそれぞれ"Barrette"と"Lunch Line, Noontime Stories"が収録。それからBlack Tar RecordsとLooney Bin Recordsの共同によるベネフィットコンピに提供している"Too Late Blues"はBuford流Jawbreakeチューン。あとDeep Elm RecordsのコンピにはSleepasaurusとのスプリットに入ってた"After Dark"が選曲。

いまから10年以上前にぼくはBufordのメンバーであるLuisさんと一時期やりとりをしていた。MySpaceを介して連絡をとってたな。そのときにもうちょいいろんなことを聞ければよかったのだけどそれはできなくて、とりあえず「わて、おたくさんがやっとったBufordやFor Saleがごっさ好きですねん、ほんまですねん」と伝え、それから当時はじめたばかりの自分のディストロでBufordの7インチをあつかわせてもらうことになった。Noise Patch Recordsの主であるLuisさんはまだいくらかの在庫をもっていた。後日とどいた荷物にはBufordの7インチのほかに当時Luisさんが在籍していたKillNineNineのデモCDRが入っていた。KillNineNineはBufordとは似ても似つかないハードコアバンドなのだけどLuisさんはこのCDRにおまけの曲をたくさん入れてくれていた。そこに入っていたBufordの最後の曲"Blank Pages"は自分にとって宝物のような大切な曲になった。この10年なにかというとこの曲のなかに入り浸っていたと思う。

 

 

最後に、Bufordメンバーが現在やっているバンドやプロジェクトについてぼくの知る範囲で軽く言及しておく。ギタリストのLuisさんは2016年より復活したFor SaleやハードコアバンドDead Man's Lifeで活動中。デジタルフォーマットのみかもしれないけどFor Saleはディスコグラフィー音源をリリースしている。シンガー/ギタリストのSharifさんはExploding Flowersというジャングリーポップバンドをやっていて、新しいアルバムをBurger Recordsからもうすぐリリースする予定。またSharifさんは先月に3枚目のソロアルバムを出した元The BagsのAlice Bagにギタリストとして参加する主要メンバーのひとりである。さらに元Operation IvyのJesseさんと新しいプロジェクトを始めたという話も。