トゥルボシュタート

こんな寒い時代(きせつ)にサッドパンクを。Turbostaatを聴いている。

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左: 1st『Flamingo』(2001) [タイトル通りフラミンゴジャケ]
右: 2nd『Schwan』(2003) [シュバン=白鳥なのに薔薇ジャケ]
奥: 3rd『Vormann Leiss』(2007) [謎ジャケ]

ドイツ北部のフレンスブルクのTurbostaatは今年で結成20周年を数える現在進行形のバンド。日本語圏だとあんまり名前を聞かない気もするけど、ドイツではけっこうメジャーだと思われる。自分が好むところのその手の哀愁メロディック的な感じのバンドはドイツにはかなりいて、そういったバンドが紹介されている文章や音源レビューなどを読むとTurbostaatかMuff Potterのどちらか、あるいは両方が引き合いに出されているのをよく目にする。Turbostaatの出自はDIYパンクということもあり、ドイツのアンダーグラウンドシーンにはこのバンドの影響を受けたバンドも多い。

Turbostaatはつい先日の1月11日に60頁のフォトブック付きのライブアルバムをリリースした。これは20周年記念的なものなのかな。LP盤は2枚組。通常のアルバムとしては現在までに6枚出していて、上の写真にあるように、自分が持っているのはデビュー作から3作目まで。あとシングルなどもいくつか出てる。最初の2枚のアルバムと1st 7"まではハンブルクのレーベルSchiffenからリリースしている(アルバムにはRookie Recordsも絡んでいる)。ちなみに同レーベルはTurbostaat以外では、Angeschissen, Blumen am Arsch der Hölle, Dackelblut, Kommando Sonne-nmilch, Oma HansといったJens Rachutさん関連のバンドの音源を出していた。Turbostaatはその後Warner Music Groupのレーベルに数年間所属し、そこからアルバムを2枚発表。メジャーとの契約が切れたあとも精力的に活動しさらに2枚アルバムを残している。

メジャーレーベルに移った3rdアルバム辺りから音楽性の変化が顕著になっていく。初期のTurbostaatはDeutschpunk(ドイチュパンク)の典型的スタイルではなかったメロディックハードコアやポストハードコア、エモからの影響を取り入れたバンド(古くはEA80やBoxhamstersやAngeschissenなど)の系譜を受け継いだエモーショナルでメロディックなパンクサウンドを奏でていた。3rdアルバム以降はパンク的な勢いのある曲は少なくなっていくものの、実験的な時期を経てより洗練され深みを帯びた白と灰色の世界観が作り上げられていくようになる。ただ、成長しない自らの鑑賞力ゆえに自分が好むのはもっぱら初期の作品。個々の曲で見たら新しい作品の方にも好きなのあるんだけど。そしてサウンド面の変化がありつつもバンドはずっとDeutschpunkを名乗り続けている。それはつまりドイツ語で歌っていることを含意している。Turbostaatの歌詞はどうも詩的なため、機械翻訳に放り込んでざっと読んでみたものの自分には解することは難しい。怒りや不安、無力感、そして悲しみが感じられるものが多いように思われる。また、デンマークとの境に近いドイツ北端のフレンスブルクに住んでいることも関係してか、冬や寒さを想起させるようなワードもたまに出てくる。そんなわけで白い吐息の似合うような、メランコリックな音楽に感じている。

ドイツ勢にはまた違った暗さやサッド感があるかもしれないけど、フィンランドのManifesto JukeboxやThe Phoenix FoundationといったバンドやUKメロディック等の哀愁メロディックパンク/エモを好む方にTurbostaat(の初期)はおすすめかも。それとTurbostaatはManifesto Jukeboxとは昔から仲良しで一緒にツアーしてたし、最近でいうと、2017年春のツアー日程のうちの数日間は2016年に一時的に復活していたManifesto Jukeboxとミニツアーを行なっている。Manifesto Jukeboxにとってはドイツでのライブは約10年ぶりだったとか。

 

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あと、2ndアルバム『Schwan』のブックレットで使用されている絵の元ネタが何なのかずっと気になっているのだけど。I Excuseの2ndのジャケと一緒。