がちゃがちゃ

以前の記事でイーストベイパンクは絶滅危惧種やって書いたけど、そういうガチャガチャした音のバンドをあらためて探してみて、そのなかで気になったのを紹介。

 

まずは、カナダはバンクーバーSecond Narrows。ギターボーカルとベースの2人は過去にSiren SongsやそのあとのPoor Formでもタッグを組んでるっぽくて、ぼくの思うイーストベイパンクなスタイルを貫きつづけている。例のごとくこのバンドもすごくかっこいい。2019年にBandcampに10曲アップされてるけど、これはいちおうアルバムなのかな。This Is My FistとかBitchin'が好きな人に。(4/25追記:今年の3月にSalinas RecordsからLPでリリースされてました)

 

つづいて、アメリカはミネアポリスHorse Girl。本人たちも意識してるように、これはRegion Rock系といったほうがいいかもしれない。Region Rockってざっくりした定義なんやけど、もともとアメリカ南東部の「The Region」という名で大まかにくくられる地域で見られる/たパンクのスタイル。勢いがあって荒々しいのにチープでポップなのが特徴で、イーストベイパンクと親和性があると思う。これは2018年に出したデモ。なんかMoronsとかTulsaが頭に浮かぶ。

 

これまたミネアポリスSiamese Eels。なんでか知らんけど、ここ何年かのミネアポリスってこの手のバンドが出てくるんよね。このバンドのメンバーが別でやってるHard Feelingsをはじめ、ちょっと前ならIntrepid HeartsとかDishpitとかB Arthurなんかもいた。これは2019年にリリースした11曲入りテープ。泥臭くて、ボロっちくて、ときにつんのめるようなサウンドがいい感じ。Hickeyへのオマージュも込められてそうやけど、どうやろか。

くるくるぽっぽー

ここんとこチェックした最近音源リリースしたバンドで気になったやつというか自分が好きな感じのやつ。今回いちおう自分のなかでいくつかのテーマに沿ってピックアップしたらアメリカのバンドばかりになった。

 

ペンシルバニアのランカスターのBrom Bones。以前の記事でこのバンドが新しいアルバムを作っていることに触れたけど、それが完成したみたいで2020年の1月にリリースされている。アルバムとしては4枚目となるのかな。またレコードでのリリースは今回が初だと思われる。結成30年以上のベテランバンドで音楽スタイル的にずっと同じようなことをやり続けているわけだが、ここ10年において3枚のアルバムを残しており、最新作からもバンドのいまだ失われない情熱やエネルギーを感じる。まるで若返ってるかのような。DescendentsやDag Nasty影響下の90年代的メロディック/ポップパンク好きに。

 

オクラホマシティTrial By Noise。ちょっと前にブログで書いたThe Lunch Bunchのメンバーがやっているバンド。今年の2月くらいにデビューアルバムがリリースされた。バンドのFacebookの投稿が1年くらいなかったので、てっきりアルバムが出るのはもっと先かあるいはもしかしたらお蔵入りになるんじゃないかとか勝手な考えを抱いていたけど、そんなことにならず先日LPレコードでしっかりリリースを果たしている。The Lunch Bunchを橋渡しに出会ったこのバンドを個人的にはけっこう気に入っていて、一筋縄ではいかんけどすごくかっこいいパンクサウンド。よくわからんけど、プログレ的っていうんだろうか、例えばDescendents/ALLなどで垣間見られる難解さ、そういうのを独自に追求していったような。わからんけど。

 

80年代後期に活動していたロサンゼルスのFreewill。このバンドといえば、1988年に録音したフルレングスがテストプレス段階までいったものの結局当時はリリースされんくて解散後の90年代に某レーベルからブートレグで出されてしまったり、またメンバー自身の手によってStone Telling名義で発表された代物があったり。そのフルレングスも30年近い時を経てバンドの再結成に合わせて2016年にめでたく正式リリースされている。その際にオリジナルメンバー4人で復活したはずだけど現在はボーカルの人が抜けて3人になっているみたい。そんなFreewillが2020年3月に新作を発表。デジタルEPということでフィジカルでのリリースはなし。過去作と比べるとハードコア色が薄くなっている。でもCruzianなイントロから始まる1曲目からいい感じ。今後イタリアのハードコアバンドZero Eight Oneとのスプリット7インチがリリースされる予定。

 

オクラホマ/ワシントンのSlorderDescendents/ALLのギタリストを中心とした3人組インストゥルメンタルバンド。ベースとドラムの2人は過去にこのブログで紹介したことのあるGold Recordsのメンバーでもある。バンド自体はとうに活動を止めていると思われるが、2020年になってSlorderの2nd EPがひょっこり発表された。これは2013年頃にもリリース間近って言われてた作品のはず。今から10年くらい前に録音された音源なのでかなり時間かかっちゃったようだけど、こうやって聴くことができてありがたい。こちらもフィジカルでのリリースはないっぽい。

あんあにーずぃぴーす

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J ChurchのLance HahnさんがサイドプロジェクトとしてやっていたハードコアバンドAn Uneasy Peaceの7"がDirt Cult Recordsよりリリース。

これはもともと闘病中のLanceさんの医療費に充てるためにベネフィットリリースとして1-2-3-4 Go! Recordsから出る予定だった音源で、リリース前にLanceさんが亡くなってしまったためにお蔵入りになったんじゃなかったっけな。それがこうして改めて日の目を見ることになってうれしい。

ほかのメンバーは、Living Under LiesやDrunken BoatのDavidさん、The ObserversやDefect DefectのMikeさん、そしてDeathheatやSignal LostやArctic FlowersのStanさん。Lanceさんが不定期で発行していたニュースレターに書かれたツアー日記によると、2005年のゲインズビルのFESTにJ Churchが参加したときに、上記のメンバーで新しいバンドやろうぜって話になったらしい。

サウンドは80年代のUSハードコアを意識してるみたいで(An Uneasy Peaceというバンド名は80年代ボストンハードコアバンドThe Proletariatの同名曲からとったのかな?)、CringerやJ Churchのハードコア寄りな曲にわりと雰囲気が近い気がするけど、なんか新鮮な感じもする。この声で歌ってくれるならなんでもいいですよ、ぼくは。

 

これ以外にもLanceさん関連で世に出てほしい作品はまだある。The Falseというインプロビゼーションパンクバンドの1999年に録音した12曲入りデモテープ(後年に2枚の7"にしてリリースする計画があり、1枚目の題名は『Tragedy Is Endless And Insatiable』となる予定だった)。宅録プロジェクトCilantroの『Broken Melodies』という12曲入りテープ。AK Pressから『Let The Tribe Increse』という題名で出版する予定だったUKアナーコパンクにかんする本など。あとはJ Churchの未発表音源なんかもいまもどこかに埋もれてるかもしれない。。

すうでるまと

Suudelmatが1stアルバムをリリースしてた。

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Suudelmatはフィンランドのトゥルクを拠点として活動するパンクバンド。これまでにHuolet ja Murheetとのスプリットテープと単独7インチを出しているが、今年に入って初のアルバム『Tyhjyydestä』をリリースした。今作は各種音楽配信サービスで聴けるほか、フィジカルでは100枚プレスと枚数は少ないがLPがリリースされている。

フロントに構える2人による掛け合い重なり合うツインボーカルが特徴のポストパンク風味のある哀愁パンクポップ。フィンランド語で歌ってる。キャッチーながらもそこはかとない侘しさを感じさせるようなメロディー・楽曲が詰まった全10曲。なお、本作における編成も含めバンドはこれまで5人で活動していたが、先日の発表によるとメンバーが増えて今は6人組になったようだ。

Facebook / Bandcamp

郊外騒音

90年代後半を駆け抜けたイタリアのエモーショナルメロディックハードコア/パンクバンドSuburban Noiseの20年ぶりの新音源『Now/Here Ep』。

2019年12月にリリースされたその作品を先日見つけたそのときは思わず声を上げそうになった。すぐさま聴いた曲はぼくを笑顔にしてくれた。最高やなと。でも聴き終えたあと、ふと目に入った記述に一瞬固まる。

These songs are dedicated to Marco Morosini (Eversor/The Miles Apart)

えっどういうこと…??Marcoに捧げる曲って?何があった?

ぼくは全く知らなかったのだが、大好きなバンドであるEversor/The Miles ApartのメンバーのMarcoさんが、昨年6月に来たるライブに向けたリハーサル(練習)の後に脳出血で倒れたらしい。昏睡状態に陥り命に危険がおよんでいたと。幸い一命は取り留めたようで、それから昏睡状態から抜け出し、その後は回復中であるとのこと(後述する記事の時点ではリハビリ病院に入院して数ヶ月経っていることなどが示唆されている)。

そんなことがあって、Marcoさんが早く回復するようにとの願いを込めた曲を作るためにSuburban Noiseは再結成されレコーディングが行われた。Marcoさんの兄弟であるLeleさん(同じくEversor/The Miles Apart)が綴った病院内でのエピソードと合わせて詳しいストーリーは以下の記事に書かれている。

Suburban Noiseの新しいEPについての記事(イタリア語)
https://rumoremag.com/2019/12/11/marco-morosini-suburban-noise-eversor-miles-apart/

同EPが聴ける主要なプラットフォームはこちら、あとBandcampでも聴ける。

 

暗い気持ちだったがあらためて聴いた曲はぼくを笑顔にしてくれた。素敵やなと。Marcoさんの回復を祈る。

 

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